全身倦怠感に効果的なセルフケア
身体がだるい、疲れがとれないなど慢性的な疲労が長期的に続いているにもかかわらず、病院の検査では異常がみられない全身倦怠感があります。
こうした慢性的な疲労感が続くと日常生活にも大きな影響を及ぼし、不眠や頭痛、胃痛、集中力が続かない、寝ても疲れがとれないといった症状を招く恐れがあるため要注意です。
これらの症状でお悩みの場合、その原因は自律神経の乱れからきているかもしれません。今回は全身倦怠感が起こるメカニズムを東洋医学の視点から解説し、効果的なセルフケア法をお伝えしていきます。
動画解説!全身倦怠感でお悩みの方へ
自律神経の働き
自律神経とは、内臓や血管の働きを自動的に調節してくれる神経のことで、自分の意志で動かすことはできません。そのため、自律神経が乱れているかどうか、自分自身ではわかりにくいのが特徴です。
気づいたときには上記のような症状が出ていることも少なくなく、現代人の9割は自律神経が乱れていると言われています。
そんな自律神経は交感神経と副交感神経で構成されています。この2つは簡単に説明すると、興奮とリラックスの切り替えスイッチのようなものです。これらが乱れると、頑張りたいときに頑張れなかったり、休みたいときに体を休ませたりすることができなくなります。
そうなると免疫力も下がるためさまざまな不調が現れ、結果的に老化が加速してしまうこともあります。逆に自律神経をうまくコントロールできるようになれば、活動のオンオフの切り替えがスムーズになり、生活の質が飛躍的に高まって若々しくいることも可能です。
自律神経が乱れやすい人とは
では自律神経が乱れやすい人とは、どのような人のことをいうのでしょうか。最近、動悸や焦りがひどいと感じる人は要注意です。この場合、副交感神経(リラックス)のスイッチがうまく働いていない状態となります。
逆にずっと眠いという人はいませんか?こちらは交感神経(興奮)が働いていない証拠なので、脳が働かず集中力が続かないことが多くなります。
今回お話しする全身倦怠感が強い人というのは、交感神経と副交感神経のどちらも正常に働いていない状態が長く続いてしまうことで起こると考えられています。全身倦怠感を改善させるには、この自律神経を整えることが重要です。
次に、自律神経を整える効果的な方法をご紹介させていただきます。
全身倦怠感を改善する4つのセルフケア
①生活習慣
まず当たり前ですが、早起きはとても重要です。早く起きることで時間的にもゆとりを持て、焦りを防止することもできます。焦りや不安は交感神経をとても強く刺激してしまうので、時間的なゆとりをもって意識的に負担をかけないようにすることが大切です。
また、朝の光を浴びることで交感神経がいい感じに刺激され、体内時計がリセットされます。また、常温の水を朝起きたときに飲むと、副交感神経が刺激されて気持ちよく朝を迎えられるのでオススメです。冷たい水や熱い飲み物だと身体をびっくりさせてしまい、交感神経が優位になってしまうのでNGとなります。
夜はお風呂にゆっくり浸かるようにしましょう。お風呂は38〜40度を目安に設定し、交感神経を優位にしないよう熱すぎない温度にします。
交感神経が優位になると寝つきが悪くなり、睡眠の質が下がってしまうこともあります。そのため、寝る90分前には布団に入ると安心です。また、食事も寝る3時間前にはすませることで、副交感神経のスイッチが入りやすくなります。
東洋医学的には深夜1~3時の間には熟睡している状態が良いといわれています。なぜならその時間帯が、解毒やデトックスをしてくれる肝臓が一番働いてくれるからです。肝臓がしっかり働くと疲れも取れやすく、睡眠の質が高まるので短い睡眠でも満足感を得られるようになります。
②食事
東洋医学、西洋医学のどちらも腸をすごく大切に考えています。それは免疫細胞の75%は腸にあるといわれているからです。免疫力があると風邪を引きにくいだけではなく、疲れにくい、集中力が長く続く、ストレスに強くなる、若々しくいられるなどたくさんのメリットがあります。
また、幸福とやすらぎのもとであるセロトニンも、つくっているのは95%が腸です。「脳腸相関(のうちょうそうかん)」という言葉がありますが、これは脳と腸は密接につながっているということを意味します。つまり、腸の状態が精神にも影響を与えるのです。
例えば、ストレスを感じると下痢になりやすくなるのも腸の影響を受けています。言い換えれば、幸せを感じやすくするポイントは腸にあったのですね。ちなみに、全身倦怠感やうつなどでお困りの方は幸せを感じにくく、ストレスを受けやすい傾向にあります。
倦怠感を解消するために、まずは腸内環境を整えてみてはいかがでしょうか。食べ物は食物繊維(リンゴ、バナナ、くるみ)と発酵食品(納豆、キムチ、みそ)を摂るのがオススメです。
外食やレトルト食品が多いと、腸内環境は悪化してしまいます。添加物(人工的な化学調物質)が多く含まれる食品は健康への影響が懸念されるため、未来の自分への自己投資としても食事の見直しはとても重要です。
③精神的ゆとりをもつ
リラックスできる時間を意識的につくることも大切で、私は音楽を聴くことをオススメしています。あなたはマナーズサウンドという言葉を聞いたことがありますか?
これはイギリスのマナーズ医師が50年以上にわたる研究の結果つくり出した音楽で、WHO(世界保健機構)によって世界で唯一認められた音楽療法のことをいいます。マナーズサウンドとは人間が健康なときに発している波動(音)を集め、それを音楽にしたものです。
病人には病人の波動というものがあるそうですが、マナーズサウンドを聴かせたところ細胞が共鳴しあって健康だった状態に戻ろうとしたそうです。まさにこれは魔法の音楽といえるでしょう。寝る前や疲れたときなどに聴いてみるのをオススメします。今ではYouTubeなど無料で聴けるものもたくさんあるので、自分に合ったものを見つけてみましょう。
次にオススメしているメンタルケアは、笑うことです。脳は笑うと副交感神経のスイッチが強制的に入るようになっています。
リラックスしたいけどできない、どうしたらいいかわからないという方は、好きなことやお笑いなどを観て意識的に笑う時間をつくるようにしていただいています。笑うと免疫力や体温が上がる、老化防止などいいことずくめなので、ぜひ笑いを日常に取り入れてみてはいかがでしょうか。
④運動する
よく「ジムに通わないとだめですか」「ラジオ体操をやった方がいいですよね」と聞かれることがあります。結論から言いますと「そこまで頑張らなくてもよだい」です。私は無理せず続けることが健康にとって一番大事だと思っています。
なので、頑張りすぎない程度にできる1日10分ほどの散歩を推奨しています。特に、朝の散歩は体内時計もリセットされるので最高ですよ。ランニングなどを頑張るのもいいですが、先ほどの自律神経の話でいうと交感神経が上がりすぎてしまう傾向があります。
また、続けられず挫折してしまうと「やはり自分には無理だ」と自己肯定感を下げて自信を失ってしまうことにもなりかねません。運動はハードルを上げすぎず、続けられることを見つけると一生の健康法になります。
以上の4つを意識し、日常に取り入れられそうなものからトライしてみましょう。
東洋医学が考える全身倦怠感
全身倦怠感へ東洋医学的なアプローチをする場合、以下の3つのタイプに分類して施術を行います。
①お血タイプ
血液が汚れている、または血流が停滞している状態です。
このタイプに多い症状は、
- 不眠、精神不安定
- 肩こり、腰痛などの痛み
- 目の下のクマ
- 毛細血管が浮き出ている(特に足の太ももやくるぶし周辺)
- 月経障害
などが挙げられます。
原因
- ストレス
- 運動不足
- 睡眠不足
- 食べ過ぎ
- 便秘
などが考えられます。
②気鬱タイプ
生命活動のエネルギーである気がうまく循環せず、停滞している状態です。症状の時間や場所が変わりやすい傾向にあります。
このタイプに多い症状は、
- 抑うつ傾向
- 頭が重い
- 朝目覚めが悪くて調子が出ない
- げっぷやガスが多い
- 息が十分に吸えない
などが挙げられます。
原因
- 考えすぎで、くよくよする
- 生活が不規則、昼夜逆転
- 偏食
などが考えられます。
③気虚(ききょ)タイプ
生命活動に欠かせないエネルギーが不足している状態です。胃腸が弱いため、食べ物からうまくエネルギーを取り込むことが困難になります。考えすぎや、働きすぎなどでエネルギーの消費が激しい傾向にあるのが特徴です。
このタイプに多い症状は、
- 身体がだるく、やる気が出ない
- 日中に眠気を感じる
- 声に張りがない
- 生あくびが多い
- 食欲がない
などが挙げられます。
原因
- ストレスを感じやすい
- 体力がない
- 筋力が弱い
- 風邪を引きやすく、虚弱体質
などが考えられます。
これらの3タイプに分けて、東洋医学では全身倦怠感をみていきます。東洋医学ではこれらのタイプに当てはめるので、どうしてそのようなことが起こっているのか、またどのように施術していくかが明確にわかるのです。
車で例えると、「お血」はガソリン自体が汚れてしまっている状態です。「気鬱」はガソリンがうまく循環していない状態を表し、「気虚」はガソリンが足りていない状態のことをいいます。
これらのタイプの一つひとつに東洋医学は対処法があり、お困りの症状を取り除くことで自然と気血の巡りも良くなります。だるさの原因である気血のうっ滞がなくなるため、自覚症状も改善していくでしょう。
鍼灸はこのような自覚症状をとっていくことで、全身の気血の巡りを改善させる施術です。長引く全身倦怠感にお困りの方は、即効性につながる鍼灸を選択肢に入れてみるのはいかがでしょうか?
まとめ
病院で検査を受けても原因がわかりづらい全身倦怠感は、放っておくと生活を脅かすため早めの対処が重要です。当店ではこれらの症状に、自律神経を整える生活習慣のアドバイスをさせていただきながら、鍼灸施術を行っています。
身体の巡りを整える鍼灸は、慢性的な倦怠感に非常に有効です。全身倦怠感の症状でお困りの方がおられましたら、ぜひ東洋医学の門を叩かれてみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。