脈診流の鍼灸について

金の鍼

古代中国より施されてきた鍼灸は、長い歴史を経て世界中でもその施術効果が認められ、広く普及されるようになってきました。現代の日本においても、慢性的な症状に非常に有効であると、注目が集まっています。

そんな鍼灸ですが、現在ではさまざまな手法や流派があることをご存じですか?

当店では、数ある鍼灸の手法の中で最も難しく、鍼灸師の技術や経験が必要とされる「脈診(みゃくしん)」を扱う「脈診流」の施術を行っています。ここでは、この脈診流の鍼灸の特徴と、その他の鍼灸との違いについて詳しく解説していきます。

脈診流鍼灸と他の鍼灸との違い

東洋医学/西洋医学

鍼灸にはさまざまな流派がありますが、大きく分けて西洋医学的な鍼灸東洋医学的な鍼灸に分けられます。西洋医学的な鍼灸とは、主に筋肉や関節、靭帯や神経といった症状に合わせて対症療法を行うものです。現在多くの鍼灸院がこの西洋医学的な鍼灸を行っていますが、これらは症状を一時的に緩和させるだけに留まっており、残念ながら症状の根本的な原因の改善には至りません。

一方、東洋医学的な鍼灸には経絡治療があり、特徴として気血の考えがあります。気血とは、身体に張り巡らされている気血水の通り道である経絡を通じて全身へ栄養やエネルギーを運び、不調改善や生命の維持、心身の成長を促す生命力の根源とされています。この気血巡りやバランスが悪くなると身体に不調が生じ、心身ともにさまざまな症状が引き起こされるのです。

気血水

お客様一人ひとり不調の根本的な原因を探し出し、その原因を取り除くことによってお客本来持っているエネルギーを引き出し、心身ともに元気な状態に戻すこと東洋医学の施術の目的となります。

鍼灸施術の際に脈をみるのはなぜ?

鍼灸・施術

東洋医学では、伝統的なカウンセリング方法であり、四診法(ししんほう)と呼ばれている望聞問切(ぼうぶんもんせつ)という診察法を使って、お客様の身体の情報を集めて原因を探るのが特徴です。

望聞問切・東洋医学

その四診法の中の切診(せっしん)ひとつに、「脈診というものがあります。東洋医学では、「脈は今現在の身体の状態を表すいわれていますそのため当店では、どんな症状の方が来されても必ず脈をて、五臓六腑のどこに原因があるかを脈診によって把握し、不調のある臓器に対し適切な手技を行います。

また脈は刻一刻と変化するものなので、今打った1本の鍼が正しいツボにアプローチできていたか、身体にどのような影響を与えたのかなどを脈をみながら即座に判断することができるのもメリットです

脈診について

脈診

脈診を行う際は、まず脈が浮いているか沈んでいるか見極めます。これにより、不調や症状のある位置を探って特定していきます。全身には気血の通り道である経絡があり脈診もこの経絡にある陰の経絡(肝心脾肺腎心包)陽の経絡(胆小腸胃大腸膀胱三焦)を用います。脈が浮いていれば陽経沈んでいれば陰経不調はあると考えるのです

次に脈の速さみていきます。脈が早いとを表し、遅いと冷えを表しています。

最後にみるのが脈の強さです虚脈は充実感のない弱い脈である場合、身体のエネルギー(気血)不足している状態であると判断します。反対に実脈引き締まってはいるけれど、邪気との激しい戦いが起こっているという状態です。

また脈には健康脈というものもあります。健康脈とは名前の通り、健康な状態である脈のことです。ここでいう健康とは、脈が浮いていたり沈んでいたりしていない、速すぎず遅すぎずない、弱すぎず強すぎない張りやツヤ、弾力ある細くしまった穏やかな脈を指し、またの名を平脈ともいいます。不調の方の乱れた脈を健康脈に整えることが、脈診流の経絡治療の真髄なのです。

なぜ痛いところと離れている場所鍼を打つのですか?

疑問

先ほどからお伝えしているように、東洋医学は気血を全身に運んでくれる経絡というものがあります。経絡には正経十二経脈と呼ばれる12本の道があり、その中に要穴と呼ばれている施術症状の見極めに対して頻繫に使われる経穴(ツボ)があります。この経穴に鍼灸を施すことで臓腑の働きを活性化させ、体質を改善させることで不調を解消させるのが脈診流の施術です。

この経穴のうち募穴、背部兪穴を除いた原穴、郄穴、絡穴、五行穴(井穴、榮穴、兪穴、経穴、合穴)、は手足末端に存在しています。つまり、腰が痛い場合でも、特効ツボとなるものが手足末端に存在している場合は、腰ではなく手足のツボにアプローチすることになります。

経絡を電車の路線図で例えるなら、この要穴とわれているものはターミナル駅のようなイメージをしていただけるとわかりやすいでしょう。要穴とは読んで字のごとく主要、つまり重要経穴であり【かなめのツボ】という意味です。そのため、どのような症状があっても、この要穴は必ず施術に使われますこれが、痛いところではなく、離れている場所に鍼灸を施す理由です。