経絡治療について
鍼灸と一言でいっても、さまざまな流派や道具、施術法があります。最近では鍼灸を扱うところが増えてきているので、どこに行けばいいか迷われる方も多いはずです。当店の鍼灸は、東洋医学の伝統的な経絡治療を用いた施術を行なっています。
経絡治療は、高度な技術と豊富な経験なくしては行えない鍼灸の最高峰ともいわれる施術で、その効果も他の鍼灸とは一線を画すものです。経絡治療と聞いてもピンとこない方もいらっしゃいますので、ここでは経絡治療の基本知識や作用について詳しく解説します。
経絡とツボ(経穴)について
東洋医学では、エネルギーである「気」や血液である「血」、それ以外の体液である「水」を全身に運んでくれる「経絡(けいらく)」というものがあります。
経絡には「正経十二経脈」と呼ばれる12本の道があり、これは自分の受け持っている区域の組織や臓腑、器官等の栄養、新陳代謝、生長などの一切の生活現象を補償するものです。もし経絡の働きが弱ってきたり、あるいは異常にたかぶったりすると、その経絡が担当している区間に影響を及ぼします。また、その区間内に異変があると、その経絡にも反応が起こるのです。
「経穴(ツボ)」とは、経絡と体表面を結ぶ設置点という意味があります。その経穴にも色々と特性があり、刺激することによって得られる病気に対する反応や改善の度合いによる系列が、陰陽五行により整理されて「十二経絡」となったそうです。
わかりやすく電車で例えるなら、経絡が線路、経穴が駅のようなものと思ってください。経穴は気血水の流れが悪くなりやすい、線路でいえば渋滞を起こしやすいポイントでもあります。気血水の滞りが生まれると痛みや症状だけでなく、離れた内臓などにも不調をきたすことがあります。これは小田急線の町田駅で電車が止まってしまった場合、小田急線全線に影響が出るようなイメージです。
その流れが悪くなっている経穴に対して、鍼やお灸をすることによって、経絡と気血水の流れを整えていきます。この流れがよくなると、痛みや不調、病気が改善されるという仕組みです。先ほどの例を用いるなら、小田急線の町田駅で止まっていた電車が動き出せば、全線のダイヤも正常に戻るようなイメージとなります。
経絡治療における鍼灸の作用とは?
先ほどお話ししたように、東洋医学には経絡と、その内外に気・血・水というものが流れていると考えられています。この気血水こそが人間の生命エネルギーであり、気血水が滞って流れが悪くなると経絡のバランスも乱れます。こうなると五臓六腑の働きが悪くなるため、その影響で心身に乱れが生じて不調が起こるのです。
こうした心身の不調に対し、経絡治療では大きく分けると二つの手技を行います。まず、気血水が不足している状態の場合に行う手技が「補法(ほほう)」です。これはまず、五臓六腑の中でどこの臓腑のエネルギーが不足しているかを、東洋医学の伝統的なカウンセリング方法である「四診法(ししんほう)」によって見定めます。
この四診法でエネルギーが不足している臓腑を判断し、気血水を補うことで人間の生命力や生活力を高めるのが補法の流れです。鍼をして灸をすえることで、人間の自然治癒力を高め、それが不調に対して力強く働くことで改善の転機が与えられます。
気血水が過剰な状態で経絡の荒ぶりを抑える場合や、人間にとって不都合なものや、害になるものを取り除く場合に行われるのは「瀉法(しゃほう)」という手技です。東洋医学では「陰と陽」「上と下」「左と右」というように、相反する物を使って施術が行われます。五臓六腑にもそのような関係があり、丁度シーソーのように各臓腑はバランスを取り合っています。
つまり瀉法は、荒ぶっている臓器を抑えることによって弱っている臓器を引き上げる、というような施術法なのです。また、冷えや湿気などといった体外からの影響を受けている場合(東洋医学ではこれを「邪」と呼びます)は、その悪いものを取り除くような施術も行います。
経絡治療の優れている点
通常はどうしても、病気そのものや症状のある場所ばかりが注目されがちですが、東洋医学ではそれを良しとはしません。東洋医学の鍼灸は、身体全体をみて不調の原因を見極めるからこそ、症状に対して的確なアプローチができるのです。
そして、経絡治療により自然治癒力が高まると体質そのものが改善されるため、その他の不調も合わせて解消されていきます。さらに、体質が改善されることによって、不調が起こりにくくなる身体づくりのサポートまで行えるのです。身体全体をみて鍼灸を施す東洋医学の経絡治療は、ほかの鍼灸では得られない高い施術効果を発揮できると確信しております。